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相続放棄しても管理責任が残ったケース

相続放棄後も不動産の管理責任が残ってしまったケースの解決事例をご紹介します。

管理責任が残ってしまう理由や解決方法、管理責任を怠った場合のリスクなども司法書士が解説します。

似たようなご状況が想定される方はぜひ参考になさってください。

解決事例

当事務所が引き受けた、相続放棄をしても管理責任が残った場合の解決事例です。

ご相談時のご状況、ご相談に至った経緯、当事務所のサポート内容をご紹介します。

ご状況(ご相談者様:A様)

・A様のご両親も祖父母もすでに他界

・A様はお兄様と2人兄弟で、相続発生時は疎遠となっていた

お兄様に妻子はおらず独身

そのお兄様がお亡くなりました。

お兄様の遺産がどれくらいあるのか、また負債もどれくらいあるのか、さっぱりわかりませんでした。

ただ、実家の小さな家にお兄様は住んでいましたので、その小さな不動産があることはわかっていました。

A様がご相談前に行った手続き

まずはお兄様の遺産と負債を調査しました。

調査の結果、実家の小さな不動産を処分しても足りないほどの負債があることが判明しました。

そこで、お兄様の遺産と負債は相続しないことにして、家庭裁判所に相続放棄の手続きをしました。

家庭裁判所で相続放棄の手続きを無事済ましたので、これでお兄様の負債まで相続することは無いと安心しておりました。

数か月後、実家の市役所から実家の不動産を適切に管理するよう通知書が届きました。

相続放棄の手続きをしたにもかかわらず、実家の管理を指示する通知が届きましたので、当事務所に相談に来られました。

司法書士のご提案&お手伝い

A様の相談をお伺いし、民法の第940条の説明をしました。

 【民法第940条】
相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

この条文により、相続放棄しても、実家の空き家がある場合は、次に管理できる者が管理できるまで、管理を継続する必要があります。

A様が管理責任の継続を回避するため、相続財産管理人の選任の申立てをいたしました。

家庭裁判所にお兄様の遺産を管理する相続財産管理人選任してもらい、その相続財産管理人に実家の管理を引き継いでもらうことをご提案しました。

結果

A様は、費用がかかってもお兄様のために、実家を整理してあげたいとお考えでした。

そのため、当事務所のご提案通り、家庭裁判所に相続財産管理人選任の申立てを行い、お兄様のための相続財産管理人を選任をしてもらいました。

引き続き、実家の空き家の処分は、相続財産管理人が引き継いでいただくことになりました。

相続放棄をした後の管理責任について

民法では、相続人が相続の承認または放棄をするまで、相続財産を管理する義務を負わなければならないと定めています。相続放棄をした後は、相続財産を管理する義務を免れるとも解釈できますよね。

しかし、相続放棄によって相続財産を管理する者いなくなることは不都合が大きく妥当ではありません。

そこで、民法では相続を放棄した者は、放棄によって相続人となった者が相続財産の管理をができるようになるまで、自己の財産と同一の注意をもって財産の管理を継続しなければならない、と定めています。

つまり、相続放棄をしても、それだけでは相続財産の管理義務から解放されるわけではないということです。

相続発生から相続不動産の管理責任の所在について、下記で解説していきます。

相続の放棄があると、その者の相続権は他の共同相続人に移ります。

たとえば、母親が死んで(父はその前に亡くなっているとする)、子どもA・Bの2人が相続人だったところ(相続分は各2分の1)、Aだけが相続放棄をしたという場合、相続放棄によってAははじめから相続人ではなかったことになるため、相続人はBになります。

このように相続人が複数いる場合なら、Aが相続放棄をしたことをその他の相続人も知ることが簡単にできると思います。

しかし、子どもが1人しかおらず、その子供が相続放棄をしたような場合はどうでしょうか?

この場合、相続権は、次の順位の相続人に移ります。母親の直系尊属(Aからみて祖父や祖母)が存命であればその人が相続人となり、直系尊属も死亡している場合には、母親の兄弟が相続人となります(Aからみて叔父や叔母)。

母親が亡くなったことは知っても、Aから相続放棄をしたということを知らせない限り、兄弟たちは自分たちが相続人だとは思っていないはずです。

そうなると、当然、相続財産の管理もしませんから、Aが管理を続けないと、相続財産を管理する者がいなくなってしまいます。

そこで、放棄をしたとしても、他の相続人が相続財産の管理を始めることができるようになるまで、管理を継続しなければならないとされているのです。

また、相続放棄をするようなケースでは、被相続人に借金などの債務があることも多くみられます。

相続放棄をしたことを知らせないでいると、自分が相続放棄をしたことによって相続人となった者に対して、債権者からいきなり「あなたは相続人だから債務を引き継いでいる」などとして請求が行くこともあり、相続放棄をした者との間でトラブルになりかねません。そうしたことからも、相続放棄をしようとするときは、あらかじめ、その次に相続人となる人に連絡しておくべきです。

もっと深刻なのは、相続人の全員が相続放棄をした場合です。

相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産の管理を引き継ぐ人がいないことになってしまいます。

かといって、相続放棄をした人がいつまでも管理を続けなければならないということになると負担が大きすぎます。

そこで、相続放棄によって相続人がいなくなってしまう場合、放棄した者や利害関係人は、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てることができるとされています。

相続財産管理人が選任されれば、その管理人が相続財産の管理を引き継ぎますので、相続放棄した者は、相続財産の管理から解放されることになります。

今回の解決事例は、この相続財産管理人選任の制度を利用したものでした。

相続財産管理人となる人に特段の資格は必要なく、申立の際に候補者をあげることもできます。

ただし、その候補者が相続財産管理人に選任されるとは限りません。実際上は、弁護士や司法書士などの専門職に委嘱されることも多くあります。

相続財産管理人は、相続財産の管理を引き継ぐとともに、被相続人の債権者に債務を支払うなどして清算を行います。家庭裁判所の許可を得て、被相続人の不動産や株など、資産を売って金銭に換えることもできます。

債権者に返済をしてそれでも財産が余ったときは、これを国庫に引き継ぐことにより任務が終了します。

相続財産管理人の選任を申し立てる際に注意しなければならないのは、申立人は費用の予納を求められることが通常だということです。

相続財産管理人がその職務を行うためには費用がかかりますし、報酬も支払われなければなりません。そのため、あらかじめ、費用を納めることが求められるのです。

予納金の額は、裁判所が事案の内容に応じて決めますが、概ね、30万円から100万円程度でしょう。

相続財産が十分にあれば、最終的には、相続財産の中から予納金も返還されます。しかし、相続財産が少ないときは返還される原資がないことになりますので、申立人が費用を自ら負担せざるを得ない結果となります。

申立てをするかどうか迷うところですが、たとえば相続財産の中に不動産があり、放置しておくと近隣に迷惑や被害を及ぼすおそれがあるようなときは、実際に被害が生じた場合、管理責任をとわれて損害賠償の請求を受けることともなりかねません。

そうした財産があるような場合は、費用がかかっても相続財産管理人の選任を検討すべきでしょう。

管理責任を怠った場合のリスク

相続放棄後に管理責任が残っていた場合、対象の不動産を管理しなかったらどんなリスクが想定されるのでしょうか。

相続放棄者の管理責任を怠ってしまうと、下記のようなリスクがあります。

1、損害賠償請求される恐れがある

相続放棄をした不動産の管理を怠ることで、損害賠償請求を受ける可能性があります。以下のような3つのケースで想定されます。

不動産の毀損により債権回収不可のケース

相続放棄をしたとしても、他の相続人か相続財産管理人が選任され、不動産をきちんと管理できるようになるまで相続放棄した者に管理責任が発生します。

その間に、管理せずに不動産が毀損されると、債権者が債権回収できなくなったり受遺者が遺産をもらえなくなったりする可能性があります。

すると相続放棄者の管理責任として、損害賠償請求されるリスクが発生するのです。

他者に被害を与えてしまったケース

不動産の管理を怠ったことで壁の一部が倒壊して通行人に怪我をさせた、賃貸用マンションの修繕を怠ったことで雨漏りが発生し住民に被害が及んだ場合、通行人や住民から損害賠償請求を受ける可能性があります。

原因が老朽化であっても管理義務を怠った結果とみなされますのでご注意ください。

また、家屋やマンションそのものだけではなく庭木なども対象となります。

相続放棄を知らせなかったケース

相続放棄をした相続人が次の相続人に相続放棄を知らせなかった場合にも、損害賠償請求の恐れがあります。

次順位の相続人が、自分に相続権が移っていることを知らなかった場合、相続財産の価値が毀損したとして、損害賠償請求がなされる可能性もあります。

2、相続放棄が無効となる恐れがある

相続放棄をしてもなお管理責任の義務がある場合、対象の不動産を処分してもよいと勘違いされておられる方がおります。

管理責任はあくまでも「管理」、処分(売却)はその範囲に含まれません。つまり、相続放棄者は勝手に遺産(不動産)を処分してはいけないのです。

不動産を処分してしまった場合、「法定単純承認」が成立してしまいます。相続放棄がなかったことになり、すべての遺産を相続することになります。

もしも、マイナスの遺産が多く、借金を背負う羽目になってしまったら大変な不利益を受ける可能性がありますよ。

相続の専門家による相談実施中!

相続手続きや遺言書作成、成年後見など相続に関わるご相談は当事務所にお任せ下さい。
当事務所の司法書士が親切丁寧にご相談に対応させていただきますので、まずは初回相談をご利用ください。

相続相談予約専用ダイヤルは0120-327-357になります。
お気軽にご相談ください。

ご相談から解決までの流れについて詳しくはこちら>>

料金表についてはこちら>>

当事務所の相続放棄サポート

お客様のご要望に応じて4つのプランをご用意しています。
まずはお気軽にご相談ください。

・「自分で手続きしたいけど、申述書作成だけは頼みたい」
・「裁判所の手続きは、やっぱり専門家に任せたい」
・「手続きだけでなく、債権者への通知などもトータルでサポートしてほしい」
・「手続き期限を超えてしまっているが、相続放棄を受理させたい」

など、お客様のご要望に応じて複数のプランをご用意しています。

相続放棄サポートの費用

相続放棄は、専門的な知識を持つことなく手続きを行うと間違えることが多く、相続放棄ができないという事態を招いてしまうと、あなたやご家族の大事な人生が親族や他人の借金(連帯保証)などで台無しにしかねません。

このような絶対に間違えてはならない手続きなどは、司法書士などの相続放棄のプロに相談し、安全で確実な相続放棄を行いましょう。

特に、相続放棄の申し立て期限である「自分が相続権があると知った日から3ヶ月」を過ぎている場合などは専門家に依頼し、慎重に手続きを行うべきです。

当事務所では、皆様の現状に合わせた3つのプランをご用意しております。自分がどのプランに適しているか分からないという方は、お気軽に当事務所までご相談下さい。

相続放棄サポートについて詳しくはこちら>>

相続放棄サポート費用

項目 ライトプラン

ミドルプラン

フルプラン
戸籍収集 ×
相続放棄申述書作成
書類提出代行 ×
照会書への回答作成支援 × ×
受理証明書の取り寄せ × ×
債権者への通知サービス ×
費用 27,500円~ 44,000円~ 55,000円~

料金表について詳しくはこちら>>

この記事を担当した司法書士

みなみ司法書士事務所

代表

光山 仁煥 (みつやま ひとし)

保有資格

司法書士、簡裁訴訟代理等関係業務認定、一家族信託普及協会正会員、日本財産管理協会認定会員、 成年後見センター・リーガルサポート登録司法書士

専門分野

相続・遺言・民事信託

経歴

みなみ司法書士事務所の代表を務める。生前におけるご自身の「財産管理」のサポートから亡くなった後の相続手続きまで最適なサポートを実施している。現在では民事信託にも力を入れており、相談者からの信頼も厚い。また、相続の相談件数1200件以上の経験から相談者からの信 頼も厚い


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